EC・通販向け電話対応の自動化完全ガイド

EC・通販の電話対応をAIで自動化する完全ガイド
「荷物どこ?」から解約受付まで、4類型で設計する

ECの問い合わせはチャットやメールに移った、と言われて久しいのに、電話は鳴りやみません。配送確認、定期購入の解約、テレビCM直後の注文、返品の相談。しかも電話をかけてくるお客様ほど、Webでの自己解決に誘導できない層です。このガイドでは、EC・通販の電話を4つの類型に分解し、それぞれをAIでどこまで自動化できるか、公的統計と公表事例だけを根拠に整理します。

対象:EC・通販事業者のCS責任者、単品リピート通販の経営者|最終更新:2026年8月23日|監修:代表取締役 鳥邉 翔
このガイドの要点

ECの電話は、なぜ無くならないのか

経済産業省の「令和6年度電子商取引に関する市場調査」(2025年8月発表)によると、2024年の国内BtoC-EC市場規模は26.1兆円で前年比5.1%増。日本通信販売協会(JADMA)の調査でも、2024年度の通販売上高は14兆5,500億円と26年連続で増加しています。市場が伸びれば、注文も、配送も、問い合わせも増えます。

一方で見落とされがちな数字があります。同じ経産省調査で、物販分野のEC化率は9.78%。つまり物販の商取引の約9割は、いまだにECの外側(店舗・電話・カタログなど)で行われています。特にテレビ・新聞・ラジオなどオフライン広告で顧客を獲得する通販では、注文も問い合わせも電話が主要チャネルであり続けており、顧客層の中心は電話に慣れた世代です。

問い合わせをチャットボットやFAQに寄せる「ノンボイス化」は確かに進んでいます。しかし電話をかけてくるお客様は、そもそもWebの自己解決手段に到達しない層です。チャットボットを強化しても、電話の呼量はその分だけ素直には減りません。

そして受け手側の事情が深刻です。日本コンタクトセンター協会(CCAJ)の2025年度実態調査では、回答企業の82.1%が採用に「苦労している」「やや苦労している」と答え、オペレーター職の72.7%に不足感、スーパーバイザーに至っては87.9%に不足感があり、「過剰気味」とした企業はゼロでした。呼量が増えたら人を増やす、というこれまでの前提が成り立たなくなっています。

整理すると、EC・通販の電話対応は「呼量は構造的に減らない」「人は構造的に増やせない」という2つの制約に挟まれています。この隙間を埋める選択肢として、電話そのものをAIが受ける・架けるという打ち手が現実味を持ち始めました。

ECの電話は4類型に分けると設計できる

「ECの電話対応を自動化したい」という漠然とした課題は、入電を用件で分解した瞬間に具体的になります。EC・通販の電話は、おおむね次の4類型に収まります。

類型内容AIでの扱い
1. 配送確認(WISMO)「注文した商品はいつ届くのか」「荷物が届かない」。海外では WISMO(Where Is My Order)と呼ばれ、EC問い合わせの代表格注文情報を照会して配送状況を回答。追跡リンクを通話中にSMS送信。最も定型度が高く、自動化の入口に最適
2. 定期購入の変更・解約定期コースの解約、お届け日変更、スキップ、数量変更。単品リピート通販では入電の中核本人確認項目を聞き取り、解約・変更を受付。「確実につながる解約窓口」という法令要請にも応える
3. 注文受付・あふれ呼電話での新規注文。テレビCM・折込チラシ直後は呼量が数倍に跳ね、取り逃しがそのまま売上損失になる商品・数量・届け先を聞き取って受注。スパイクに席数の上限なく追従できるのがAIの構造的な強み
4. 返品・交換返品可否の確認、交換手続き、破損・誤配送の申告一次受付と状況の聞き取りを自動化し、手順はSMSで案内。例外判断と補償の決定は人へ引き継ぐ

以下、類型ごとに「どれくらい発生するのか」「AIで何がどこまでできるのか」を見ていきます。

類型1:配送確認(WISMO)— 問い合わせの平均18%を占める定番

ECヘルプデスク大手のGorgiasは、1万2,000以上のブランドのデータから、WISMOが受信する問い合わせの平均18%を占める、ECで最も多い質問だと公表しています。日本のEC現場で「配送確認」「荷物どこ電話」と呼ばれてきたものと同じです。

WISMOの発生構造と4段階の削減策は、WISMOとは?「注文した商品はどこ?」問い合わせの意味と削減策で詳しく解説しています。

類型2:定期購入の変更・解約 — 顧客体験とコンプライアンスの交差点

国民生活センターによると、通信販売の定期購入に関する相談は2023年度80,315件 → 2024年度89,401件 → 2025年度93,065件と増え続けています。相談の典型が「解約したいのに電話がつながらない」です。

ここは顧客体験だけの問題ではありません。特定商取引法(2022年6月改正法施行)は通信販売の契約解除の妨害に当たる行為を禁止し、消費者庁のガイドラインは、解約方法を電話とする場合には「確実につながる電話番号を掲載しておく必要」があり、かけても一切つながらないような場合は不実表示に該当するおそれがあるとしています。つまり解約窓口があふれたまま放置すること自体がリスクです。

実例もあります。D2C定期通販のビタブリッドジャパンは、電話での定期購入の変更・解約・返品をボイスボットで自動完結させ(EC-CUBEとのAPI連携)、応答率を10%以上改善したとベンダー公式事例で公表されています。同じ事例には、継続利用のご案内の成功率は自動応答では約50%程度とオペレーターより低い、という限界も明記されており、「受付はAI、引き止めの提案は節度を持って設計する」という役割分担の重要性を示しています。

法令の要求水準、解約受付フローの設計、引き止めをどこまでAIにやらせるべきかは、定期通販の解約電話が「つながらない」は法的リスクで詳しく解説しています。

類型3:注文受付とあふれ呼 — 取り逃しは売上の直接損失

テレビ・ラジオ・新聞広告起点の通販では、いまも電話が主要な受注チャネルです。この業態の宿命があふれ呼です。CMが流れた直後の数十分に呼が集中し、席数を超えた分は話中・放棄呼になります。コストの問題ではなく、広告費をかけて生んだ注文意欲をその場で取り逃す、売上の直接損失です。

実際の自動化率の例として、木製品通販の谷治新太郎商店では、月300件の電話問い合わせのうち約9割を自動化したことがベンダー公式事例(IVRy)で公表されています。規模の大小を問わず、定型の受付はここまで任せられる水準に来ています。

類型4:返品・交換 — 一次受付までを自動化し、判断は人に残す

返品・交換は一見定型に見えて、例外が多い類型です。開封済みかどうか、返品期限、送料の負担、破損の状況。ここをAIで完結させようとすると、かえって顧客体験を損ねます。

チャットボットと電話AI、どう使い分けるか

「カスタマーサポートの自動化」の文脈では、チャットボットの成功事例が多く語られます。アスクルのLOHACOはAIチャットで全問い合わせの3分の1を自動対応(省人化効果6.5人分)と公表し、ファンケルはAIチャットの実証実験で問い合わせ完了数が約2割向上、ニトリはチャットボットとビジュアルIVRを軸とした生成AI改革で約30人分の業務工数を削減したと公表しています。いずれも優れた成果ですが、これらはすべてテキストチャネルの成果です。

観点チャットボット・FAQ電話AI(AIコールセンター)
届く層Webで自己解決しようとする層電話でしか問い合わせない層(オフライン獲得顧客・高齢層に多い)
減らせる呼量電話の手前で吸収できた分だけ間接的に減るかかってきた電話そのものを直接自動化する
向く用件FAQ・仕様確認・手続き案内本人確認を伴う受付(解約・変更・注文)、緊急性のある確認
限界電話をかけてくる層には届かない例外判断・交渉・補償の決定は人に残す

チャットボットと電話AIは競合ではなく分担です。判断の軸はシンプルで、「その問い合わせは、いまどのチャネルで来ているか」。電話で来ているものはチャットの強化では減りません。電話で来ているなら、電話のまま自動化するのが最短です。

導入の進め方(EC・通販の場合)

  1. 直近1か月の入電を4類型で数える
    配送確認/定期の変更・解約/注文受付/返品・交換/その他に分けて集計します。多くの通販でこの4類型が入電の大半を占め、どこから自動化すべきかが数字で決まります。
  2. 最も定型度の高い類型から始める
    入口は配送確認(WISMO)か定期の変更・解約が定石です。どちらも聞き取る項目が固定されており、効果測定が容易です。
  3. 注文システム・CRMとの連携を設計する
    注文照会、解約処理の記録、SMS送信、担当者への通知。カート・OMS・CRMと接続して初めて「回答して完結する」自動化になります。
  4. あふれ呼・営業時間外へ広げる
    まず営業時間外とあふれ呼だけAIが受ける構成から始めれば、現行のオペレーター体制を変えずに効果を確認できます。うまく回れば日中の一次受けへ広げます。
  5. 録音・全文テキストで応対品質を改善し続ける
    AIの応対はすべて録音と全文テキストが残ります。「どこで顧客が詰まったか」を確認してスクリプトを直す、という改善ループを回します。

AIに任せない領域を先に決める

自動化の設計で最も重要なのは、任せる範囲ではなく任せない範囲を先に決めることです。当社は次の線引きを推奨しています。

よくある質問(EC・通販の電話自動化)

ECの電話対応は、実際どこまでAIで自動化できますか?
用件の類型によります。配送確認・定期購入の変更や解約・注文受付のような、聞き取る項目が決まっている定型受付は自動完結まで任せられます。公表事例では、木製品通販の谷治新太郎商店が月300件の電話の約9割を自動化、D2C通販のビタブリッドジャパンが定期購入の変更・解約・返品の電話をボイスボットで自動完結させ応答率を10%以上改善しています。一方、クレームの判断や補償の決定、健康相談は人に残す設計を推奨します。
チャットボットを既に入れています。電話AIも必要ですか?
電話の呼量が減っていないなら、必要性は高いと考えられます。チャットボットが吸収できるのはWebで自己解決しようとする層で、電話をかけてくるお客様には届きません。特にオフライン広告で獲得した顧客や高齢層が中心の通販では、電話で来る問い合わせは電話のまま自動化するのが最短です。両者は競合ではなく分担の関係です。
テレビCM直後のあふれ呼にも対応できますか?
対応できます。AIの受電は席数に縛られないため、呼が集中する時間帯だけ同時対応数が自動的に広がるのと同じ効果になります。ピークに合わせた人員配置や、ピーク以外の時間の人件費の遊びが発生しません。まず営業時間外とあふれ呼だけAIが受ける構成から始めれば、現行体制を変えずに効果を確認できます。
解約の電話をAIにすると、解約が増えませんか?
解約の意思があるお客様は、つながらなくても解約をやめるわけではなく、不満と行政相談が増えるだけです。国民生活センターへの定期購入関連の相談は2025年度に93,065件に達し、消費者庁のガイドラインは解約方法を電話とする場合「確実につながる電話番号」の掲載を求めています。むしろAI受付で解約理由が確実にデータ化されるため、商品・オファーの改善やLTV分析に使えるようになります。継続のご案内を節度を持って組み込むことも可能です。
注文システムやCRMとの連携は必須ですか?
配送確認や解約受付を「回答して完結する」水準にするには、カート・OMS・CRMとの連携が実質的に必要です。連携がない場合でも、用件と顧客情報の聞き取り・記録・担当者への通知までは自動化でき、折り返し対応の効率が大きく上がります。段階導入として、まず聞き取りと通知から始めて後から連携を足す進め方も一般的です。
費用はどのくらいかかりますか?
席数課金ではなく、月額基本料と対応量に応じた従量課金が一般的です。繁忙期に呼量が跳ねても、オペレーターの採用・教育コストは発生しません。AIコールセンター20サービスの料金公開状況は費用相場のページに独自調査としてまとめていますので、比較の出発点にしてください。
まず、直近1か月の入電を4類型で数えるところから

自動化の効果は入電の内訳で決まります。用件別の集計のしかたからご相談いただけます。配送確認・解約受付の実際の応対音声も、デモでご確認ください。

出典:経済産業省「令和6年度電子商取引に関する市場調査」(2025年8月26日、BtoC-EC市場規模26.1兆円・物販EC化率9.78%)/日本通信販売協会「2024年度通販市場売上高調査」(2025年8月28日、14兆5,500億円・26年連続増加)/日本コンタクトセンター協会「2025年度コンタクトセンター企業実態調査」(採用に苦労82.1%・オペレーター不足感72.7%・SV不足感87.9%)/国民生活センター「通信販売での定期購入」相談件数(2026年7月31日更新、2025年度93,065件)/消費者庁「通信販売の申込み段階における表示についてのガイドライン」(令和6年11月19日通達別添)/Gorgias公式ブログ(WISMOは受信問い合わせの平均18%)/PKSHA公式導入事例(ビタブリッドジャパン)/IVRy公式事例(谷治新太郎商店)/Hmcommプレスリリース(ディノス・セシール、2018年)/アスクル・ニトリ・ファンケルの各公表資料(いずれもテキストチャネルの成果として引用)。当社(株式会社Rabona AI)はAIコールセンターの提供事業者です。

このページの監修者
鳥邉 翔(株式会社Rabona AI 代表取締役)

電話業務のAI自動化を手がける株式会社Rabona AIの代表取締役。AIによる電話の受電・架電サービス「AIコールセンター」「AIテレアポ Rabona AI」などの音声AIプロダクトの開発・提供を統括している。本サイトの記事は、公開されている一次ソース(各社公式サイト・公式プレスリリース・公的統計)にもとづき編集部が執筆し、音声AIの開発・運用実務の観点から監修している。