2026年8月更新対処法つき一次ソースで検証

AIコールセンターのデメリット8つ
導入前に知るべき限界と対処法

AIコールセンターの導入を検討すると、ベンダーのサイトにはメリットばかりが並びます。しかし実際の導入企業の公表データを見ると、自動化率には明確な上限があり、日本語特有のつまずきどころも存在します。このページでは、AIコールセンターの提供事業者である当社が、あえてデメリットを正面から8つ挙げ、それぞれが「どんな窓口で顕在化しやすいか」「実務上どう対処されているか」を、公開されている一次ソースをもとに整理します。デメリットを知らずに導入して失敗するより、限界を織り込んで設計するほうが、結果として効果は大きくなります。

公開日:2026年8月28日|更新日:2026年8月28日|執筆:株式会社Rabona AI 編集部|監修:代表取締役 鳥邉 翔
このページの要点

デメリット一覧(早見表)

AIコールセンターの主なデメリットは、自動化率の上限・応答の間・聞き取り精度・初期チューニング・料金の不透明さ・転送コスト・顧客受容性・個人情報管理の8つです。いずれも「導入をやめる理由」ではなく「設計時に織り込むべき制約」ですが、対処法の有無と効き方には差があります。まず全体を一覧で示します。

デメリット実務への影響主な対処法
1. すべての電話は自動化できない実例の自動完結率は34〜96%。例外対応は必ず残る「9割自動化+人は例外対応」を前提に設計する
2. 応答の「間」に機械感が残る人間の応答は平均208ミリ秒、音声AIは実測1.4〜1.7秒応答速度を製品選定の評価項目にする(800ミリ秒未満が推奨ライン)
3. 住所・漢字氏名の聞き取りが苦手音声認識の最難関。ここでつまずくと通話が破綻するSMS送信を併用し、文字情報はフォーム入力に逃がす
4. 導入直後から賢くはない初期チューニングと通話ログをもとにした改善が必要導入後の改善体制・改善機能をベンダーに確認する
5. 料金が不透明で総額を見誤りやすい主要20サービス中、実額公開は8件のみ通話料・転送料・SMS料込みの「1コール単価」で比較する
6. 人への転送にもコストが残る転送通話には1分14.3円程度の通話料が発生し続ける「人に繋ぐ率」を測り、転送を減らす方向に改善する
7. 機械対応を嫌う顧客層がいる途中離脱・顧客満足度の低下につながりうる定型用件から適用し、人につながる経路を必ず残す
8. 個人情報の管理項目が増える録音・文字起こしデータの保存先と委託先管理が必要保存場所・保存期間・第三者提供の有無を契約前に確認する

デメリット1. すべての電話は自動化できない

AIコールセンターを導入しても、電話業務のすべてが自動化されるわけではありません。企業の公式リリースやベンダーの公式導入事例で原文を確認できた27事例では、AIによる自動完結・自動化率は34〜96%でした。上限側の東京ガス(繁忙期最大96%)でも、残りの通話は人が受けています。全時間帯・全用件の完全自動化を公表した事例は確認できず、「100%」を掲げた事例は夜間帯に範囲を限定したものだけでした。

数字の幅を決めているのは製品の性能よりも、対象業務の性質です。配送状況の確認や予約受付のように用件が定型化した窓口では90%台が現実的に狙える一方、代表電話の一次受付では50〜60%台に集まり、交渉や判断を伴う通話は今も人の領域です。

対処法:最初から「9割自動化+人は例外対応」を前提に設計することです。自動化率100%を目標にすると、AIに無理をさせて誤案内が増え、かえって顧客体験を損ねます。どこまで自動化できるかの詳しい実例データはコールセンターの無人化はどこまで可能かにまとめています。

デメリット2. 応答の「間」に機械感が残る

音声AIの応答には、人間よりも長い「間」があります。人間同士の会話でターンが替わるときの沈黙は平均208ミリ秒、日本語は調査対象10言語中もっとも速い平均7ミリ秒という研究結果があります(Stivers et al., PNAS 2009)。一方、音声AIの応答時間の実測中央値は1.4〜1.7秒(Hamming社の400万通話分析)。この差が、通話相手が「機械っぽい」と感じる主な正体です。

日本語は世界でも特に「間」が短い言語のため、応答レイテンシの要求は構造的に厳しくなります。同じ製品でも英語圏でのデモと日本語の実運用では体感が変わる点に注意が必要です。

対処法:製品選定時に応答速度を評価項目に入れることです。実務上は応答800ミリ秒未満が推奨ラインとされます。デモの段階で実際に電話をかけ、あいづちのタイミングや話を遮ったときの挙動まで確かめてください。この観点は20サービスの比較表でも「応答速度・レイテンシ」として項目化しています。

デメリット3. 住所・漢字氏名の聞き取りが苦手

住所と漢字氏名の聞き取りは、日本語音声認識の最難関です。同音異字が多く(「サイトウ」だけで斉藤・斎藤・齋藤・西東…)、建物名や部屋番号のような固有名詞は音声だけでは確定できません。東京ガスはまさにこの壁——契約者名(漢字)や建物名の正確な聴取——のために、数年にわたり検討を重ねながらボイスボット導入に至っていませんでした。

対処法:音声だけで完結させないことです。東京ガスは通話中にSMSでフォームを送り、住所や氏名などの文字情報はフォーム入力してもらう二重モードを採用し、2024年3月の繁忙期にAI対応完了率最大96%を達成しました。聞き取りが難しい情報を音声で粘るのではなく、SMSに逃がすのが確立された実務解です。製品選定では、通話中にSMSを送信できるかを必ず確認してください。

デメリット4. 導入直後から賢くはない

AIコールセンターは、導入した日から完璧に応対できるわけではありません。自社の業務用語・よくある用件・例外パターンを反映する初期チューニングと、実際の通話ログをもとにした継続的な改善が必要です。ここを「導入すれば終わり」と考えていると、初週の応対品質に失望して頓挫します。

一方で、立ち上がりに何か月もかかるわけではありません。当社の導入事例では、エアコン工事・給湯器交換を手がける宝宮設備様(神奈川県厚木市)が約1週間で実務を任せられる精度に到達し、現在は1日20〜50件の受電の約9割をAIが完結させています。かかる期間は業務の複雑さと、初期設定に使える資料(トークスクリプト・FAQ・過去の通話録音)の充実度で決まります。

対処法:契約前に「導入後の改善は誰がどうやるのか」を確認することです。通話ログを見て改善提案までベンダーが伴走するのか、自社で画面から直せるのか、AIが自律的にスクリプトを改善する機能があるのか。この体制の差が3か月後の品質差になります。

デメリット5. 料金が不透明で総額を見誤りやすい

AIコールセンター業界は、料金の透明性が低い業界です。当サイトが2026年7〜8月に主要20サービスの公式サイトを調査した結果、料金の実額を公開していたのは8件(40%)。電話応対を主軸とする国内8サービスに絞ると、公式に月額を公開しているのはIVRyとトビラフォン Cloudの2件だけでした。大半は「要問い合わせ」で、相見積もりを取るまで比較のしようがありません。

さらに、基本料の外側に通話料・転送料・SMS送信料(IVRy公開値でAI自動応答1分3.3円、SMS 1通14.3円)といった従量費目があり、見積書の月額だけを比べると総額を見誤ります。

対処法:「1コールあたりの総額」に換算して比較することです。月間入電数×平均通話時間から、基本料+従量費を含めた1コール単価を各社同じ条件で計算します。換算の手順と20サービスの調査結果はAIコールセンターの費用相場で公開しています。

デメリット6. 人への転送にもコストが残る

AIが受けた電話を人に転送すると、その転送通話に通話料(固定電話で1分14.3円程度)が発生し続けます。「AIを入れたのに電話代が減らない」というケースの多くは、人に繋ぐ率が高いまま運用しているためです。転送率が高いと、AIの利用料と転送通話料と人件費の三重払いになり、費用対効果が急速に悪化します。

対処法:「人に繋ぐ率」を毎月測ることです。転送された通話のログを見ると、実はAIで答えられた定型質問が転送されているケースが見つかります。それをFAQやスクリプトに反映して転送率を下げていく運用が、費用対効果を決める実質的なハンドルです。あわせて、AIがヒアリングした内容をオペレーター画面に引き継げる製品を選ぶと、転送後に顧客が同じ説明を繰り返す二重の手間を防げます。

デメリット7. 機械対応を嫌う顧客層がいる

どれだけ品質が上がっても、「機械と話したくない」という顧客は一定数存在します。特に緊急時や感情的になっている場面では、AIの応対そのものが不満の種になりえます。従来型IVRの「ご用件の方は1を押してください」が長年嫌われてきたのと同じ構図で、当社の導入企業でも「番号を押させる形は顧客体験を落とす」としてIVRを見送り、会話型のAIを選んだ例があります。

ただし、機械対応が常に体験を下げるわけではありません。営業時間外にまったく電話がつながらない状態と、AIが24時間受けて用件を聞き取り折り返しを約束する状態を比べれば、後者のほうが顧客体験は上です。問題は「機械かどうか」ではなく、「用件が片付くかどうか」です。

対処法:2つあります。第一に、定型用件から適用を始めること。配送確認や営業時間の質問のような用件は、待たされず即答されることが体験価値になります。第二に、人につながる経路を必ず残すこと。「オペレーターに繋いでほしい」と言われたら素直に取り次ぐ設計にしておけば、機械対応を嫌う顧客を無理にAIで抱え込まずに済みます。

デメリット8. 個人情報の管理項目が増える

AIコールセンターを導入すると、通話録音と文字起こしテキストという個人情報を含むデータが新たに生成・保存されます。顧客の氏名・連絡先・用件がベンダーのクラウドに保存されるため、個人情報保護の観点では管理すべき委託先と保存データが増えることになります。社内の個人情報保護規程やプライバシーポリシーの委託先記載の見直しが必要になる場合もあります。

対処法:契約前に確認すべき点は明確です。録音・テキストの保存場所(国内か海外か)、保存期間と削除ポリシー、通話データがAIモデルの学習に使われるか、第三者提供の有無、アクセス権限の管理方法。この5点を各社に同じ質問で投げれば、姿勢の差はすぐに分かります。セキュリティの確認観点は完全ガイドのセキュリティの章でも詳しく整理しています。

デメリットが出やすい窓口・出にくい窓口

同じ製品でも、適用する窓口によってデメリットの顕在化のしかたはまったく違います。判断の目安を表にまとめます。

窓口のタイプ適性理由
配送確認・注文受付(EC・通販)高い用件が定型で即答価値が高い。繁忙期の入電の9割が配送確認だった実例もある
予約・キャンセル受付(クリニック・飲食・スクール)高い日時・氏名・用件のヒアリングが定型。取りこぼし削減の効果が直接見える
夜間・時間外の一次受付高いもともと誰も出ていない時間帯のため、失敗しても失うものがない
代表電話の一次受付・取次用件の幅が広く自動完結率は50〜60%台に落ちるが、振り分けだけでも効果はある
設備トラブル・緊急対応の受付緊急度の振り分けと折り返し約束までが現実的な範囲。最終対応は人
契約内容の変更・本人確認を伴う手続きSMS併用が前提。音声だけで完結させようとするとデメリット3が直撃する
クレーム・交渉が中心の窓口低い感情対応と判断が中心で、機械対応そのものが火に油を注ぐリスクがある
通話の大半が例外・個別判断の窓口低い定型パターンが少なく、チューニングしても自動完結率が上がりにくい

導入判断のための5つの質問

デメリットを許容できるかどうかは、次の5つの質問で概ね判断できます。

  1. 入電の上位3用件は定型か? — 直近1か月の入電を用件別に数えたとき、上位3用件で全体の半分以上を占め、かつその応対が定型なら、デメリット1・7は許容範囲に収まる可能性が高いです。
  2. 音声だけで完結できない情報はあるか? — 住所・氏名・メールアドレスの取得が必須の業務なら、SMS併用ができる製品に絞ってください(デメリット3)。
  3. 導入後の改善に使える材料はあるか? — トークスクリプト、FAQ、通話録音が揃っているほど立ち上がりが速くなります(デメリット4)。
  4. 1コール単価で比較したか? — 見積の月額ではなく、従量費込みの1コール単価と、有人対応の1席あたり月額約25万円(三大都市圏の平均時給1,484円×160時間+CTI席料)を並べて判断してください(デメリット5・6)。
  5. 人につながる経路を残せるか? — エスカレーション先の体制が用意できないなら、適用範囲を夜間や一次受付に絞るところから始めてください(デメリット7)。

よくある質問

AIコールセンターの一番大きなデメリットは何ですか?
「すべての電話は自動化できない」ことです。公式リリースで確認できた27の導入事例でも、自動完結率は34〜96%で、例外対応は必ず人に残ります。ただしこれは設計で織り込める制約であり、最初から「9割自動化+人は例外対応」を前提にすれば、デメリットではなく前提条件になります。より実務的に注意すべきなのは、料金の不透明さ(主要20サービス中、実額公開は8件のみ)と、住所・漢字氏名の聞き取りの弱さです。
AIの応対は不自然ではありませんか?お客様に失礼になりませんか?
差が出るのは応答までの「間」です。人間同士の会話のターン間の沈黙は平均208ミリ秒(日本語は10言語中最速の平均7ミリ秒)に対し、音声AIの実測中央値は1.4〜1.7秒で、この差が機械感の正体です。製品間の差が大きい項目なので、デモで実際に電話をかけて確かめることをおすすめします。また「失礼かどうか」は間の長さよりも「用件が片付くか」で決まります。営業時間外に誰も出ないより、AIが用件を聞き取って折り返しを約束するほうが顧客体験は上です。
高齢のお客様が多いのですが、AIで対応できますか?
「番号を押してください」と操作を求める従来型IVRと違い、会話型のAIは普段どおり話してもらうだけなので、操作の壁は低くなります。一方で、ゆっくりした話し方や方言への追従、聞き返しの自然さは製品差が出るところです。高齢の顧客層が多い場合は、人につながる経路を明確に残した設計(「オペレーターをご希望の場合はお申し付けください」)を強くおすすめします。
導入に失敗するのはどんなケースですか?
典型的な失敗は3つです。①自動化率100%を目標にしてAIに無理をさせ、誤案内で顧客体験を壊す ②クレーム・交渉中心の窓口に適用してしまう ③導入後の改善を誰もやらず、初期設定のまま品質が上がらない。いずれも製品の問題ではなく適用範囲と運用体制の問題で、対象業務を定型用件に絞り、通話ログをもとに改善する体制を作れば避けられます。
セキュリティ面のリスクはありますか?
通話録音と文字起こしテキストという個人情報を含むデータがベンダー側に保存されるため、委託先管理の対象が増えます。契約前に、データの保存場所(国内か海外か)、保存期間と削除ポリシー、通話データがAIの学習に使われるか、第三者提供の有無、アクセス権限管理の5点を確認してください。この5点を同じ質問で各社に投げると、対応の姿勢の差が明確に分かります。
デメリットを踏まえても導入する価値はありますか?
窓口によります。用件が定型的な窓口(配送確認・予約受付・夜間の一次受付など)では、8つのデメリットはいずれも対処可能で、有人1席あたり月額約25万円という人件費と比べた効果が明確に出ます。一方、クレーム・交渉が中心の窓口や、通話の大半が個別判断を要する窓口では、デメリットがメリットを上回ります。まず直近1か月の入電を用件別に数えて、定型用件の割合を確かめるところから始めてください。

まとめ:デメリットは「導入しない理由」ではなく「設計条件」

AIコールセンターの8つのデメリットのうち、6つ(間・聞き取り・チューニング・料金・転送・個人情報)には確立された対処法があります。残る2つ(自動化の上限・機械対応を嫌う層)は、対処するのではなく設計で織り込むもの——「9割自動化+人は例外対応」を前提に、人につながる経路を残す——です。

逆に言えば、対処法が機能しない窓口(クレーム中心・例外中心)では導入すべきではありません。ベンダーである当社がこれを明記するのは、向かない窓口に導入された1件の失敗は、向く窓口での10件の成功より業界の信頼を損なうからです。検討の際は、まず自社の入電の内訳を数えること。それがデメリットの大きさを見積もる唯一確実な方法です。

自社の窓口でデメリットがどう出るか、試算します

Rabona AI のAIコールセンターは、受電・架電の両方に対応し、通話中のSMS送信・有人への引き継ぎ・通話ログをもとにした改善までを一連のフローとして設計できます。直近1か月の入電の内訳から、自動化できる範囲と残るデメリットを具体的にお示しします。

本ページで参照した出典

記載内容は2026年8月時点の公開情報にもとづきます。当社(株式会社Rabona AI)はAIコールセンターの提供事業者であり、本ページには自社サービスの案内を含みます。デメリットの記述は特定の他社製品への評価ではなく、音声AIという技術と業界慣行に共通する制約の整理です。

この記事の監修者
鳥邉 翔(株式会社Rabona AI 代表取締役)

電話業務のAI自動化を手がける株式会社Rabona AIの代表取締役。AIによる電話の受電・架電サービス「AIコールセンター」「AIテレアポ Rabona AI」などの音声AIプロダクトの開発・提供を統括している。本サイトの記事は、公開されている一次ソース(各社公式サイト・公式プレスリリース・公的統計)にもとづき編集部が執筆し、音声AIの開発・運用実務の観点から監修している。